学習目標
点推定・区間推定・推定量と推定値の違い、不偏性・一致性の定義、信頼区間の正しい解釈を理解する。1. 点推定と区間推定
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|
| 点推定 | 1つの値でパラメータを推定 | \(\hat{\mu}=\bar{x}=72.3\) |
| 区間推定 | 区間でパラメータを推定 | \([69.1,\ 75.5]\)(信頼区間) |
2. 推定量と推定値
- 推定量(estimator):標本から計算するための関数(確率変数)。例:\(\bar{X}\)
- 推定値(estimate):実際のデータを代入した具体的な数値。例:\(\bar{x}=72.3\)
3. 不偏性と一致性
例:\(\bar{X}\) は \(\mu\) の不偏かつ一致推定量。不偏分散 \(s^2=\frac{1}{n-1}\sum(x_i-\bar{x})^2\) は \(\sigma^2\) の不偏推定量。
\(n\) で割る標本分散 \(\hat{\sigma}^2=\frac{1}{n}\sum(x_i-\bar{x})^2\) は \(\sigma^2\) を過小評価する(偏りがある)。試験では \(n-1\) で割る不偏分散を使う。
4. 信頼区間と信頼係数
信頼区間 \([L,U]\):真のパラメータが含まれると期待される区間。
信頼係数:同じ手続きを繰り返したとき、区間が真の値を含む割合(95%など)。
正しい解釈:「同じ手続きで100回区間を作ると約95回は真の値を含む」。「この区間が真の値を95%の確率で含む」とは意味が異なる。試験で問われることが多い。
5. 例題
【例題 18-1】不偏性の確認
母集団 \(\{1,3,5\}\)(母平均 \(\mu=3\))から復元抽出で \(n=2\) の標本を取るとき、\(\bar{X}\) の期待値を求め不偏推定量かどうか確認せよ。
解答
可能な標本(各確率1/9)の \(\bar{X}\) の値:1,2,3,2,3,4,3,4,5
\(E[\bar{X}]=(1+2+3+2+3+4+3+4+5)/9=27/9=\mathbf{3}=\mu\) ✓
\(\bar{X}\) は \(\mu\) の不偏推定量。
【例題 18-2】信頼区間の解釈
「母平均の95%信頼区間は [68.5, 75.5]」について正しい解釈はどれか。
①母平均が68.5〜75.5に含まれる確率は95%
②この手続きを繰り返すと約95%の区間が母平均を含む
③信頼係数95%は有意水準5%に対応する
解答
正解:②と③①誤:母平均は固定した定数。「確率95%」は区間(確率変数)が真の値を含む頻度の記述。②正:頻度論的な正しい解釈。③正:信頼係数 \(1-\alpha=0.95\) は有意水準 \(\alpha=0.05\) に対応。
6. 練習問題
問題 1
不偏推定量の定義として正しいものはどれか。
①標本サイズが大きくなるほど精度が上がる推定量
②推定量の期待値が真のパラメータと一致する推定量
③推定値のばらつきが最も小さい推定量
④95%の確率で真の値を含む区間を与える推定量
解答
正解:②①は一致性、③は最小分散不偏推定量(MVUE)、④は区間推定の説明。
問題 2
不偏分散で \(n-1\) で割る理由を説明せよ。
解答
偏差の計算に真の \(\mu\) ではなく標本から推定した \(\bar{x}\) を使うため自由度が1つ失われる。\(n\) で割ると \(\sigma^2\) を過小評価する(偏りがある)。\(n-1\) で割ることで不偏性が成立する(ベッセルの補正)。
問題 3
一致性と不偏性の違いを説明し、「一致だが不偏でない推定量」の例を示せ。
解答
不偏性:どの \(n\) でも \(E[\hat{\theta}]=\theta\)(有限標本の性質)。
一致性:\(n\to\infty\) で確率収束(大標本の性質)。
例:\(\hat{\mu}=\bar{X}+1/n\) は \(E[\hat{\mu}]=\mu+1/n\ne\mu\) なので不偏でないが、\(n\to\infty\) で \(\mu\) に収束するため一致推定量。