学習目標
実験デザインの基本と、フィッシャーの3原則(無作為化・反復・ブロック化)の意味と効果を理解する。1. 実験研究の目的とRCT
ランダム化比較試験(RCT)は因果推論に最も信頼性の高い方法。処理群と対照群に無作為割り当てを行う。
- 処理群(Treatment group):研究対象の処理を受けるグループ
- 対照群(Control group):処理を受けないグループ(または標準的処理を受けるグループ)
二重盲検法(double-blind):被験者も実施者も割り当てを知らない状態で実験。プラセボ効果や観察者バイアスを排除。
2. フィッシャーの3原則
① 無作為化(Randomization)
実験単位を処理群にランダムに割り当てる。既知・未知の交絡変数をグループ間に均等分散させる。
無作為化なしでは交絡を制御できず因果推論が困難になる。
② 反復(Replication)
同じ処理を複数の実験単位に適用。実験誤差の推定を可能にし、統計的検定を可能にする。
各処理が n=1 のみでは処理効果と誤差を分離できず、統計的検定が不可能。
③ ブロック化(Blocking)
実験単位を均一なグループ(ブロック)に分け、各ブロック内で無作為に処理を割り当てる。既知の外的変動を誤差から取り除く。
3. 例題
【例題 12-1】3原則の適用
3種の肥料A・B・Cの効果を比較する実験。圃場は日当たりのよい上段と悪い下段に分かれる。フィッシャーの3原則をどう適用するか述べよ。
解答
①
無作為化:上段・下段それぞれの中でどの区画にどの肥料を割り当てるかをランダムに決める。
②
反復:各肥料を複数の区画に割り当て、誤差推定を可能にする。
③
ブロック化:日当たり(上段/下段)をブロックとして扱い、各ブロック内に3種の肥料をそれぞれ配置。日当たりの影響を取り除いて肥料効果を比較(乱塊法)。
【例題 12-2】二重盲検法の意義
新薬の治験で二重盲検法を採用する理由を述べよ。
解答
①
プラセボ効果の排除:被験者が「薬をもらった」と知ると心理的効果で回復しやすくなる(プラセボ効果)。
②
観察者バイアスの排除:実施者が割り当てを知ると評価・測定に無意識の偏りが生じる(observer bias)。両方を排除して薬の純粋な効果を測定するために採用。
4. 練習問題
問題 1
フィッシャーの3原則のうち「実験誤差の推定を可能にする」原則はどれか。理由とともに答えよ。
解答
反復(Replication)各処理を1回だけ行うと、得られた結果が処理効果によるものか偶然の誤差によるものか区別できない。反復によって処理内のばらつき(実験誤差)を推定でき、統計的検定が可能になる。
問題 2
ブロック化の効果を「完全無作為化計画」と比較して説明せよ。
解答
ブロック化により、既知の外的変動(例:圃場の場所・患者の年齢)を誤差から分離できる。これにより誤差分散が小さくなり、処理効果をより鋭く検出できる(検出力が上がる)。ブロック化なしの完全無作為化計画では、この外的変動が誤差に混入し、処理効果の検出が難しくなる。
問題 3
等分散 \(t\) 検定と Welch の \(t\) 検定の違いを述べよ。どちらをデフォルトとすべきか。(実験計画の文脈で2群比較を行う場合)
解答
等分散 \(t\) 検定:\(\sigma_1^2=\sigma_2^2\) を仮定。プール分散を使用、自由度 \(n_1+n_2-2\)。
Welch の \(t\) 検定:等分散を仮定しない。自由度を近似計算。
等分散を事前に確認するのは難しいため、
Welch の \(t\) 検定をデフォルトとする方が安全。