学習目標
観察研究と実験研究の違い、母集団・標本・無作為抽出の概念、交絡変数による因果推論の困難さを理解する。1. 全数調査 vs 標本調査
| 種類 | 内容 | 長所 | 短所 |
|---|
| 全数調査 | 母集団全体を調査 | 完全な情報 | コスト・時間・困難 |
| 標本調査 | 一部を抽出して調査 | 低コスト・迅速 | 標本誤差が生じる |
2. 観察研究 vs 実験研究
| 比較項目 | 観察研究 | 実験研究(RCT) |
|---|
| 研究者の関与 | 自然な状態を観察するだけ | 研究者が処理を無作為割り当て |
| 因果推論 | 困難(交絡の影響) | 可能(交絡を制御) |
| 例 | 喫煙者と非喫煙者の追跡調査 | 新薬のランダム化比較試験 |
3. 母集団・標本・ランダムネス
- 母集団:調査対象のすべての個体の集合
- 標本:母集団から抽出した一部
- 無作為抽出:すべての個体が等確率で選ばれること。偏りのない推測の前提
4. 交絡(Confounding)
観察研究で因果推論が難しい主因。第3の変数(交絡変数)が原因と結果の両方に影響し、見かけ上の相関を生じさせる。
「相関は因果ではない」。観察研究では交絡を完全に排除できないため、因果関係の証明にはRCTが必要。
5. 例題
【例題 10-1】研究の分類
(a)1000名の喫煙習慣と肺機能を調査し比較した。(b)200名を無作為に2群に分け、食事療法を6ヶ月実施して体重変化を比較した。(c)交通事故記録からシートベルト使用状況と負傷程度の関係を調べた。
解答
(a)
観察研究:喫煙習慣は操作していない
(b)
実験研究(RCT):研究者が無作為に割り当て
(c)
観察研究(後向き):過去のデータ使用、介入なし
【例題 10-2】交絡の指摘
「スポーツ選手は一般人より骨密度が高い」という観察研究から「スポーツが骨密度を高める」という因果推論をできるか。
解答
できない(注意が必要)。①骨密度が高い人がスポーツに参加しやすい(逆因果)、②食事・睡眠・サプリメントなどの交絡変数が存在する可能性がある。因果関係を示すにはRCTが必要。
6. 練習問題
問題 1
バイアスは標本サイズを増やせば解消できるか。理由とともに答えよ。
解答
解消できない。バイアス(系統的な偏り)はどれだけ標本サイズを増やしても変わらない。例:インターネット調査では高齢者が除外され続ける。バイアス解消には設計の改善が必要。標本サイズを増やすと
標本誤差(ランダム誤差)は減らせる。
問題 2
「子供に音楽教育を受けさせた家庭の子供は学力が高い」という観察研究がある。「音楽教育が学力を高める」という因果推論のために必要な研究デザインと、観察研究での交絡変数の例を挙げよ。
解答
研究デザイン:
無作為化対照試験(RCT)。子供を無作為に「音楽教育あり/なし」群に割り当てて比較。
交絡変数の例:家庭の経済力(裕福な家庭は音楽教育も学習支援も充実)、親の教育水準(教育熱心な親は両方積極的)。